【FP監修】個人年金保険料税制適格特約とは?メリット・デメリット、中途付加も解説

保険の基本を知る2022.03.15 公開 | 2023/04/21 更新

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個人年金保険加入時に検討してほしいのが、個人年金保険料税制適格特約の付加です。この特約を利用すれば高い節税効果が発揮できる可能性があります。そこで今回はこの個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリット、そして中途付加の方法まで徹底解説します。加入検討している人は特約利用の参考にしてください。

個人年金保険料税制適格特約とは

 

個人年金保険料税制適格特約とは、支払った個人年金保険料の所得控除を受けるために付加する特約のことです。個人年金保険料税制適格特約を付加することで、個人年金保険料控除を受けられるようになります。

それでは、この個人年金保険料税制適格特約はどのような特約なのかを、具体的に紹介していきましょう。

 

生命保険料控除とは

2021年5月現在、下記保険料を支払った納税者は、一定額の所得控除(所得税・住民税)を受けることができます。

  • 生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料

これら3つの所得控除を総称して生命保険控除と呼びます。つまり、個人年金保険料税制適格特約は生命保険控除の1つというわけです。

保険料支払いで所得控除が受けられるのは周知の事実ですが、「具体的にはどんなものなのだろう?」こう思っている人は多いでしょう。個人年金保険料税制適格特約を含む生命保険料控除は、節税効果を高める上で欠かすことができない基礎知識になります。

有効な節税対策を実践するためにも、どんなものが生命保険料控除の対象になり、いくらの所得控除が受けられるのかはちゃんと理解しておくべきです。

それでは生命保険料控除の対象と控除額を順追って見ていくことにしましょう。

 

生命保険料控除の対象

先程、生命保険料控除の対象として個人年金保険料税制適格特約を含む3つを挙げましたが、締結した保険契約日によって、生命保険控除の対象が異なります

(新契約:2012年1月1日以降に締結した保険契約)

  • 一般生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料

(旧契約:2011年12月31日以前に締結した保険契約)

  • 一般生命保険料
  • 個人年金保険料

同じ保険料を支払っていても、契約締結日によって控除対象が異なるというわけです。この点は勘違いしないように覚えておきましょう。

 

生命保険料控除に該当する保険契約一覧

次は生命保険料控除に該当する保険契約を見てみましょう。生命保険料控除の対象となる、主な保険契約は下記のとおりです。

生命保険料控除の対象保険 契約内容
一般生命保険料控除 定期保険
終身保険(生命保険)
収入保障保険
学資保険
個人年金保険(*個人年金保険料税制適格特約なし)
介護医療保険料控除 医療保険
がん保険
介護保険
災害保険
三大疾病保障特約
先進医療特約
個人年金保険料控除 個人年金保険(*個人年金保険料税制適格特約あり)

個人年金保険は個人年金保険料税制適格特約を付加しなくても、一般生命保険料控除として控除を受けることができます。

個人年金保険料税制適格特約を付加しなければ、控除が受けられないわけではありません。この点は勘違いしないようにしてください。

また、今回紹介した生命保険料控除の対象保険はごく一部です。一般生命保険料控除と介護医療保険料控除の対象となる保険契約はまだまだあります。控除対象かどうかわからない場合は、必ず専門家に相談することをおすすめします。

 

生命保険料控除の控除額

生命保険料控除の控除額も、新契約か旧契約かで異なります。また所得税控除と住民税控除の計算方法や合計控除の限度額が全く異なる点も要注意です。

(新契約の所得税控除額)

年間の保険料支払額 控除額
20,000円以下 全額
20,000円超え~40,000円以下 保険料支払額×1/2+10,000円
40,000円超え~80,000円以下 保険料支払額×1/4+20,000円
80,000円超え 一律40,000円
合計控除額の限度額 120,000円

(新契約の住民税控除額)

年間の保険料支払額 控除額
12,000円以下 全額
12,000円超え~32,000円以下 保険料支払額×1/2+6,000円
32,000円超え~56,000円以下 保険料支払額×1/4+14,000円
56,000円超え 一律28,000円
合計控除額の限度額 70,000円

(旧契約の所得税控除額)

年間の保険料支払額 控除額
25,000円以下 全額
25,000円超え~50,000円以下 保険料支払額×1/2+12,500円
50,000円超え~100,000円以下 保険料支払額×1/4+25,000円
100,000円超え 一律50,000円
合計控除額の限度額 100,000円

(旧契約の住民税控除額)

年間の保険料支払額 控除額
15,000円以下 全額
15,000円超え~40,000円以下 保険料支払額×1/2+7,500円
40,000円超え~70,000円以下 保険料支払額×1/4+17,500円
70,000円超え 一律35,000円
合計控除額の限度額 70,000円

上記の算出表に当てはめて計算すれば、生命保険料控除額は簡単に算出できます。難しい計算式ではないので、戸惑うことなく算出できるでしょう。

しかし、注意してほしいのは、合計控除額に限度額が設けられている点です。先に紹介したように生命保険控除の限度額は各控除対象一律で決まっています。

控除対象 限度額
一般生命保険料控除 (新契約)所得税:40,000円
住民税:28,000円

(旧契約)所得税:50,000円
住民税:35,000円

介護医療保険料控除(*新契約のみ)
個人年金保険料控除

各保険契約の合計控除額が上記限度額を超えたとしても、超過分は控除対象とはなりません。合計控除額の算出時には注意してください。

 

実際の還付額をシミュレーション計算

それでは実際に個人年金保険料税制適格特約で、いくらの還付が受けられるのかをシミュレーションしてみます。

生命保険文化センターが発表した「生命保険に関する全国実態調査(2016年度版)」によると、1世帯当たりの個人年金保険料の平均年間支払額は約20万円です。

この数値を元に、所得税と住民税の控除額を先程紹介した算出表から計算すると、双方とも下記のように限度額いっぱいの控除を受けられます。

  • 所得税控除額:40,000円(新契約の場合)
  • 住民税控除額:28,000円(新契約の場合)

しかし、勘違いしてはならないのは、控除額と還付額は別物である点です。控除額は所得税と住民税算出時に必要な課税所得を引き下げる金額であり、実際に還付される金額ではありません

所得税ならば控除額に下記所得税率を掛けた金額、住民税であれば控除額に10%を掛けた金額が年末調整で還付されます。

課税所得金額 所得税率
195万円未満 5%
195万円以上~330万円未満 10%
330万円以上~695万円未満 20%
695万円以上~900万円未満 23%
900万円以上~1,800万円未満 33%
1,800万円以上~4,000万円未満 40%
4,000万円以上 45%

よって、個人の課税所得金額が195万円だった場合、年間20万円の個人年金保険料で還付される金額は下記のとおりです。

  • 所得税:40,000円×10%=4,000円
  • 住民税:28,000円×10%=2,800円

このケースであれば、合計6,800円の節税効果を生み出します。

所得税は課税所得金額が大きいほど税率が高くなり、その分、支払う所得税も大きくなります。しかし、その反面、課税所得金額が大きいほど節税効果も大きくなるというわけです。

所得税は税金の中でも高額区分に分類されます。有益な節税効果を得るためにも、控除漏れがないようにしてください。

 

生命保険料控除の申告方法

生命保険料控除の申告方法は、納税者がサラリーマンか自営業者で下記のように異なります。

  • サラリーマン:勤務先の年末調整で控除申告
  • 自営業者:確定申告時に控除申請

保険料を給与天引きにしている場合は、勤務先が勝手に控除申告してくれます。そのため、「控除申告などしたことがない」と思っているサラリーマンも少なくありません。

筆者もその1人でした。

しかし、給与天引き以外の保険料支払いがある場合は、勤務先に控除申告を依頼する必要があります。中には何らかの理由で「申請申告の依頼を忘れた」ということもあるでしょう。この場合は諦める必要はありません。

個人で確定申告すれば、年末調整で控除申告を忘れても還付を受けることができるからです。もともと確定申告が必要ないサラリーマンは、確定申告時期にかかわらず翌年以降5年間はいつでも控除申告できます。控除申告を忘れた時は、確定申告で還付を受けるといいでしょう。

しかし、確定申告したことのないサラリーマンにとって、確定申告の手続きは簡単ではありません。専門家にどうすればいいかを相談した上で、対応を検討するようにしてください。

 

 

個人年金保険料税制適格特約を付加する条件

先に紹介したように、個人年金保険料税制適格特約を付加すれば、個人年金保険料を一般生命保険料控除ではなく、個人年金保険料控除で受けとれます。

しかし、個人年金保険料税制適格特約を付加するには、下記3つの条件をすべてクリアしなければなりません。

  • 年金受取人と被保険者が同一であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上であること

誰でも個人年金保険料税制適格特約を付加できるわけではないのです。

 

①年金受取人と被保険者が同一であること

被保険者とは、保険の契約事項に沿って保険金や給付金が支払われる人を指します。

個人年金保険における被保険者は老後資金の受取人です。となれば年金受取人と被保険者が異なるのことが、個人年金保険の趣旨に反するのは言うまでもありません。

また、もう1点注意してほしいのは契約者です。個人年金保険料税制適格特約を付加するには、契約者が夫婦いずれかである必要があります。

時折、両親や兄弟等が契約者となっている場合もみられます。しかし、この場合は個人年金保険料税制適格特約を付加できないので注意してください。

 

②保険料の払込期間が10年以上であること

個人年金保険には保険料の払込期間がさまざま設定されています。個人年金保険料税制適格特約を付加するためには、この払込期間が10年以上であることが必須条件です。

加入時期が遅く10年に満たない場合や、一括支払いした場合は個人年金保険料税制適格特約を付加できません。また払込期間は保険期間ではありません。この点は勘違いしないようにしてください。

 

③確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上であること

個人年金保険は下記3つの種類に分類されます。

確定年金 有期年金 終身年金
受取期間 決められた一定期間 決められた一定期間 生存中ずっと
受取人死亡時 遺族が受け取れる 遺族は受け取れない 遺族は受け取れない

上記の確定年金・有期年金に個人年金保険料税制適格特約を付加する場合は、下記2つの条件クリアが必要です。

  • 年金受取開始が60歳以降
  • 受取期間が10年以上

終身年金には条件のくくりはありませんが、確定年金・有期年金の人は注意してください。

 

個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリット

個人年金保険は一般生命保険料控除枠で控除が受けられます。そのため、無理に個人年金保険料税制適格特約を付加して控除を受ける必要はありません。

基本的には、加入している終身保険や学資保険等で一般生命保険料控除の限度額がいっぱいになり、控除枠から外れた時に利用すべき控除方法です。

しかし、その時には個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリットをしっかり踏まえた上で検討することをおすすめします。特にデメリットには注意するようにしましょう。

それでは個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリットには、どんなものがあるのかを確認していきましょう。

 

個人年金保険料税制適格特約のメリット

個人年金保険料税制適格特約のメリットは生命保険控除を最大限利用でき、高い節税効果を発揮できる点でしょう。

個人年金保険は何も個人年金保険料税制適格特約を付加しなくても、一般生命保険料控除枠で控除を受けることが可能です。しかし、一般生命保険料控除には下記のように、加入率の高い保険商品が区分されています。

  • 定期保険
  • 終身保険(生命保険)
  • 学資保険

特に死亡保障や高度障害保障の終身保険は男女ともに加入率が80%を超えています。そのため、一般生命保険料控除は終身保険だけで控除限度額がいっぱいになる世帯が大半です。

ですが、個人年金保険料税制適格特約を付加すれば、個人年金保険控除枠で個人年金保険の控除を受けることができます。

他の保険で一般生命保険料控除が限度額に達しているならば、個人年金保険料税制適格特約を付加して個人年金保険控除を受ければいいのです。

他の保険はこうはいきません。これは個人年金保険だけに認められた特別なメリットと言っていいでしょう。

 

個人年金保険料税制適格特約のデメリット

個人年金保険料税制適格特約のデメリットは、なんと言っても契約内容の自由度が制限される点でしょう。

先に紹介したように、個人年金保険料税制適格特約を付加するには、下記3つの条件をすべてクリアしなければなりません。

  • 年金受取人と被保険者が同一であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上であること

そのため、節税効果を気にするあまり、個人年金保険料税制適格特約の付加を前提に保障内容を決めてしまうと、自分に合った保障内容にならない可能性が出てきます

節税も大事ですが、まずは個人年金保険に加入する目的を思い出してください。保険は希望する保障を受けるために加入するものです。

節税を求めるがあまり保障内容を譲ったことで、後悔することにならないようにしてください。

 

個人年金保険料税制適格特約の付加に関する注意点

これは個人年金保険料税制適格特約のデメリットにも通じるのですが、個人年金保険料税制適格特約にはいくつかの注意点があります。

 

  • 個人年金保険料税制適格特約の付加条件を満たさない契約内容に変更できない
  • 個人年金保険料税制適格特約だけを解約できない
  • 契約内容変更による返戻金は増額年金の買い増しに充てられれる

上記のように個人年金保険料税制適格特約の付加後にはいくつもの制限が設けられています。付加する際にはこれら制限をよく踏まえたで利用するようにしてください。

 

個人年金保険料税制適格特約を中途付加する方法

個人年金保険に加入していても、個人年金保険料税制適格特約の存在を知らなかったという人は少なくありません。

加入時に保険会社から説明がなかったため、気にもしなかったという人もいるでしょう。しかし、安心してください。

個人年金保険料税制適格特約は中途付加することができます。先に紹介した個人年金保険料税制適格特約の付加条件をクリアしていれば、問題なく中途付加することが可能です。

  • 年金受取人と被保険者が同一であること
  • 保険料の払込期間が10年以上であること
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上であること

中途付加する方法は、契約している保険会社に問い合わせすれば詳しく案内してくれます。中途付加を検討している人は、保険会社に連絡してみましょう。

 

まとめ

今回は個人年金保険料税制適格特約について徹底解説しました。効率的に節税対策するにはぜひとも利用してほしい控除制度です。

しかし、問題は個人年金保険料税制適格特約を付加すると、かなりの縛りが出てくるため、自分に合った保障内容とならないケースも出てきます。付加したほうがいいか悪いか判断がつかないこともあるでしょう。

そんな時は、専門家の知識を頼るべきです。後悔しないためにも、少しでも迷いがあるならば、保険のプロに相談するようにしてください。

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