【FP監修】ゆうちょの個人年金保険ってどう?メリット、返戻率シミュレーション、解約方法も解説!
個人年金保険は保険会社の窓口で加入する人が多いかもしれませんが、ゆうちょでもいくつかの個人年金保険を取り扱っています。
この記事ではゆうちょの個人年金保険について、メリットや返戻率シミュレーション、iDeCoとの違いなどを専門家が解説しています。
記事監修者
SYN Group 株式会社
白村 明弘
ゆうちょの個人年金保険に関する基礎知識
人生100年時代の中で老後の生活に不安を感じ、若いうちから個人年金保険で積み立てておこうと考える人が増えています。
しかし、個人年金保険はさまざまな保険会社が販売しているので、どの商品に加入すべきか迷ってしまうこともあるでしょう。
ゆうちょ銀行でもいくつかの個人年金保険を取り扱っているので、迷った場合はなじみのあるゆうちょで個人年金保険に加入しようと考えられる方も多いのではないでしょうか。
まずこの章では
そもそも個人年金保険ってなに?
といった基礎を解説するとともに、混同されがちなゆうちょとかんぽの関係性などについても解説していきます。
個人年金保険の概要と種類
個人年金保険とは、保険会社が販売している、私的年金として利用できる保険商品です。
国民年金や厚生年金といった公的年金に加えて、さらに老後の備えをしたい方が任意に加入します。
公的年金と同じように定期的に保険料を積み立てて、60歳や65歳など一定の年齢になったら年金として受け取れます。
個人年金保険の財源は保険料とその運用益であり、公的年金と違って社会保険料等は使われません。
そのため運用次第では元本割れする可能性のある商品もあり、公的年金とは少し異なることを認識しなくてはいけません。
個人年金保険は、大きく分けて
- 定額個人年金保険
- 変額個人年金保険
の2種類があります。
両者は運用方法やリスクの大きさが違うので、メリット・デメリットを把握しておくことが大切です。
①定額個人年金保険
定額個人年金保険は、加入した時点で最終的にもらえる年金の額が決まっている個人年金保険です。
変額個人年金保険のような大きなリターンは期待できませんが、ローリスク・ローリターンで手堅く老後の備えができます。
ただし、元本保証は満期まで加入した場合の話で、途中解約した場合は元本割れすることもあります。
また、あらかじめ定められた運用利率(予定利率)で運用するため、将来大きなインフレになった時に対応できないデメリットもあります。
②変額個人年金保険
変額個人年金保険(または変動年金)とは、運用成績次第でもらえる年金の額が変わる個人年金保険です。
積極的な運用をして高いリターンを目指すので、定額個人年金保険より多くの年金がもらえる可能性があります。
一方、変額個人年金保険は元本保証がないので、もし運用がうまくいかなかった場合、もらえる年金が支払った保険料より少なくなってしまう可能性もあります。
支払われる年金額を決めてしまわないのは、将来大きなインフレになってもそれに合わせた運用ができるという意味合いもあります。
2022年11月現在、日本を含めた世界各国で物価上昇・インフレが発生していますよね。
インフレリスクに対応しやすいのは、定額個人年金保険にないメリットです。
ゆうちょ銀行・郵便局・かんぽ生命の関係性は?
ゆうちょ銀行・郵便局・かんぽ生命は普段あまり区別せずに考えていることが多いかもしれませんが、実はこれら3つは全て別な会社です。
3社とも日本郵政の子会社で、日本郵政のグループ企業の一つになります。
そして、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、それぞれ銀行窓口業務と保険窓口業務を郵便局に業務委託しており、私たちは普段郵便局でこれらの手続きを行います。
ゆうちょ銀行・郵便局・かんぽ生命がよく混同されるのは、業務委託して郵便局で一括して取り扱っているからです。
ゆうちょの個人年金保険とは
個人年金保険は保険会社の窓口などで加入することが多いですが、ゆうちょでもいくつかの個人年金保険を取り扱っています。
ゆうちょで取り扱っている個人年金保険は、
- 届くしあわせ(変額個人年金)
- ハッピーロード(変額個人年金)
- 財産形成年金定額貯金
になります。
他にもiDeCo(個人型確定拠出年金)も取り扱っていますが、これは後の章であらためて解説します。
まずこの章では、ゆうちょで取り扱っている変額個人年金保険と、財産形成年金定額貯金について解説します。
①変額年金保険
ゆうちょが取り扱っている個人年金保険は「届くしあわせ」と「ハッピーロード」で、どちらも変額個人年金保険になります。
一般に変額個人年金保険は元本保証がありませんが、届くしあわせとハッピーロードは100%または110%の最低保証があるので、途中解約しなければ元本割れの心配はありません。
また、この2つは「ターゲットタイプ」と呼ばれる個人年金保険で、運用成果が一定の額に達したらその時点で利益を確保するのも特徴です。
この2つの特徴により、変額個人年金保険でありながら、リスクを抑えて安定した資産運用ができます。
・ゆうちょの変額個人年金保険の特徴
- 100%または110%の最低保証
- 運用成果が目標に達したら利益を確保(ターゲットタイプ)
届くしあわせ
届くしあわせは三井住友海上プライマリー生命が提供している商品であり、最低保証が100%で、運用の目標値は110%・115%・120%から選べます。
目標値に達したら目標達成のお知らせが届き、目標達成日のおおむね一年後から年金の受給が開始されます。
年金は
- 受給期間10年の確定年金
- 一括払い
での受け取りとなります。
目標を達成しなかった場合の年金の受け取り方法は、一括払い・確定年金・終身年金・夫婦年金のいずれかです。
どの方法で受け取るかは契約時に選ぶことができます。
終身年金と夫婦年金を選んだ場合は、5年・10年・15年の保証期間をつけることができます。
もし保証期間中に受取人が死亡しても、遺族が残りの年金を受け取れるので安心です。
積立期間は15年から20年の1年刻みで、75歳以下の方が契約することができます。
ハッピーロード
ハッピーロードも届く幸せ同様に三井住友海上プライマリー生命から提供されている外貨建ての変額個人年金保険で、米ドル・オーストラリアドル・ニュージーランドドルのいずれかを選んで運用します。
届くしあわせと同様に運用の目標値が設定でき、105%から200%の間で設定できます。
届くしあわせよりも高い目標値が設定できるので、積極的な運用をしたい方におすすめです。
積立期間は10年・15年・20年で、ニュージーランドドルは10年のみとなります。
年金の受取方法は確定年金か終身年金で、終身年金は年金総額保証付きとなります。
加入できるのは、積立期間10年なら80歳未満、15年なら75歳未満、20年なら70歳未満です。
保険料の支払い方法は一時払いのみで、毎月積み立てるといったことはできないので注意しましょう。
②財産形成年金定額貯金
財産形成年金定額貯金は、給料から天引きして老後の資金を貯められる貯金です。
貯めた貯金は60歳以降に毎月(年払いなども可)払い戻されるので、年金と同じ感覚で受け取ることができます。
貯金なので個人年金保険のような元本割れのリスクがなく、安心して老後の資金を貯められるのがメリットです。
一方、個人年金保険と違って高いリターンを得ることはできません。
利子は半年複利で、受け取った利子には税金がかからないのが特徴です。
限度額は最大550万円で、預入金額は月1,000円から千円単位で可能です。
少額でも積み立てができるので、無理のない範囲で老後資金を貯めることができます。
ゆうちょの個人年金保険を選ぶメリットは?
さまざまな保険会社が個人年金保険を販売している中で、ゆうちょの個人年金保険を選ぶメリットは何なのでしょうか。
メリットとしては、ネームバリューや全国のゆうちょ店舗を利用できることなど、以下の4つが挙げられます。
この章では、これらのメリットについて一つずつ解説していきます。
- ネームバリューがある
- さまざまな魅力のある変額年金保険に加入できる
- 複数の保険商品から選択できる
- 全国のゆうちょ店舗で加入・相談できる
メリット①ネームバリューがある
個人年金保険は投資信託などに比べるとリスクが小さい商品ですが、それでもリスクが全くないわけではありません。
大事な老後資金の積み立てで損をしないために、どのような経路で個人年金に加入するか慎重に選びたいと思う人は多いでしょう。
ゆうちょは多くの人が口座を持っており、日常的にお金を入れたりおろしたりしていますし、郵便物を送ったり年賀状を買ったりと、日々の生活に密着していて非常になじみがあります。
この安心感は、メリットと感じる方も多いのではないでしょうか。
メリット②さまざまな魅力のある変額年金保険に加入できる
ゆうちょの変額個人年金保険は、元本保証があったり運用目標を立てて利益を確定できるなど、他の変額個人年金保険と比べていろいろな特徴があります。
こういったさまざまな魅力のある変額個人年金保険に加入できるのも、ゆうちょの個人年金保険を選ぶメリットの一つだといえます。
メリット③複数の保険商品から選択できる
ゆうちょの個人年金保険は、届くしあわせとハッピーロード、そして財産形成年金定額貯金と、複数の商品から選択することができます。
複数の保険商品から選択できるのも、ゆうちょの個人年金保険のメリットです。
届くしあわせとハッピーロードはともにターゲットタイプの個人年金保険ですが、かつてゆうちょでは「ステップアップタイプ」という、別なタイプの個人年金保険も販売していました。
ステップアップタイプは年金算出基準額が段々増えていくのが特徴で、積極的に年金額を増やすことができます。
ゆうちょが取り扱っていたステップアップタイプの代表的な商品は「人生年金 すてきに長生き」などですが、残念ながら現在は新規募集が停止されています。
メリット④全国のゆうちょ店舗で加入・相談できる
ゆうちょの店舗は全国に約2万4,000店あり、全国どこでもお近くのゆうちょ店舗で個人年金保険の加入・相談ができます。
生命保険会社の営業所数は大手でも1,000程度しかないことが多いので、それと比べるとゆうちょの店舗数は圧倒的に多いといえます。
また、普段からATMや公共料金の支払いなどで使っているゆうちょの店舗なら、顔見知りの職員がいることもあるでしょう。
顔見知りの職員なら個人年金保険の相談もしやすく安心です。
ゆうちょの個人年金保険の返戻率シミュレーション
ゆうちょの個人年金保険は、届くしあわせ・ハッピーロードともに変額個人年金保険なので、最終的な返戻率がいくらになるかは運用実績によります。
よって返戻率のシミュレーションというのは難しいのですが、届くしあわせ・ハッピーロードのパンフレットには、一例として過去のインデックスや為替レートのデータを使ったシミュレーションが載っています。
パンフレットによると、1990年代から2000年代ごろのデータでシミュレーションした場合、目標値を達成できる確率は下の表のようになるということです。
これはあくまで過去のデータを用いたものなので、今加入してこのようになるわけではありませんが、一つの目安として参考にするとよいでしょう。
届くしあわせのシミュレーション例(積立期間15年の場合)
- 目標値110% → 達成率100%
- 目標値115% → 達成率100%
- 目標値120% → 達成率97.0%
ハッピーロードのシミュレーション例(保証率100%・積立期間15年の場合)
- 目標値105% → 達成率100%
- 目標値120% → 達成率97.3%
- 目標値150% → 達成率90.0%
- 目標値200% → 達成率74.7%
ゆうちょの個人年金保険と他の人気商品を比較
ゆうちょの個人年金保険と、他の人気商品であるJA共済「ライフロード」と日本生命「みらいのカタチ」を比較してみます。
ライフロードは予定利率を年ごとに見直す予定利率変動型で、みらいのカタチは定額個人年金保険です。
両者ともゆうちょの個人年金保険とはタイプが違います。
みらいのカタチの返戻率は、30歳加入で約105%となっています。
定額個人年金保険はリスクが少ないのがメリットですが、返戻率は長く加入してもこの程度に収まります。
※すべて2022年8月現在の情報をもとに記載しております。
ゆうちょの個人年金保険
返戻率 | 運用成績による |
種類 | 変額個人年金 |
加入可能年齢 | 80歳未満 |
加入期間 | 10年から20年 |
受取方法 | 一括・確定年金・終身年金・夫婦年金 |
JA共済「ライフロード」
返戻率 | 運用成績による |
種類 | 予定利率変動型 |
加入可能年齢 | 18歳から85歳まで |
加入期間 | 選択可能 |
受取方法 | 定期年金(5・10・15年)・終身年金 |
日本生命「みらいのカタチ 年金保険」
返戻率 | 30歳加入で約105% |
種類 | 定額個人年金 |
加入可能年齢 | 7歳から65歳まで |
加入期間 | 選択可能 |
受取方法 | 確定年金(5・10・15年)・終身年金 |
ゆうちょの個人年金保険の口コミ・評判
実際にゆうちょの個人年金に加入した方の口コミを見てみましょう。
30代女性
「郵便局で案内を受けてハッピーロードに加入しました。やや複雑な商品に感じましたが、丁寧に説明をしてもらい資産形成の第一歩として始めました」
株や投資信託などの証券取引にいきなり取り組むのは少しハードルが高いけれど、資産形成を始めたいという方には良さそうですね!
ゆうちょのiDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCo(イデコ)とは、自分で運用方法を選んで運用する年金制度の一つです。
iDeCoは掛金や運用益に対して税制優遇があり、普通に資産運用するよりお得に老後の備えができます。
私的年金という意味では個人年金保険もiDeCoも同じですが、さまざまな点で違いがあるので、メリット・デメリットを理解して自分のライフプランに合ったものを選ぶことが大切です。
iDeCoは銀行や信用金庫、証券会社などで取り扱っていますが、ゆうちょでも加入することができます。
参照:iDeCo公式サイト
ゆうちょ銀行のiDeCo「ゆうちょAプラン」とは
ゆうちょで取り扱っているiDeCoは「ゆうちょAプラン」というもので、2022年現在はこのプランのみの取り扱いとなっています。
かつてはBプランという商品もありましたが、現在は新規募集が停止されています。
ゆうちょAプランでは、老齢給付金に加えて、障害給付金と死亡一時金を受け取ることができます。
運用方法は投資信託26種類と預貯金8種類で、この中から自分で運用方法を選んで運用していきます。
投資信託は元本保証がない代わりに、預貯金よりも高いリターンを目指すことができます。
選べる投資信託のタイプはバランス型・債権・株式・リートで、それぞれ国内・海外型のファンドが用意されています。
預貯金は利率が低い代わりに元本が保証されているので、手堅く老後の備えをしたい方に向いています。
ゆうちょの個人年金保険との相違点を比較
下の表は、ゆうちょと個人年金保険の主な違いを示したものです。
特に重要なのは元本保証の有無で、iDeCoは投資信託で運用した場合元本割れのリスクがあります。
iDeCoは途中解約ができないのも注意しておきたい点です。
iDeCoは所得控除が充実しているのが、個人年金保険にないメリットです。
特に掛金は全額所得控除されるので、掛金を増やすほど節税効果が高くなります。
一方、個人年金保険では保険料の控除は上限が決まっており、それを超えた分は控除することができません。
個人年金保険 | iDeCo | |
---|---|---|
元本保証 | あり(途中解約しない場合) | なし(投資信託で運用した場合) |
リターンの目標値 | 設定できる | 設定なし |
所得控除 | 小 ・掛金は一部所得控除 |
大 ・掛金は全額所得控除 ・運用益は全額非課税 |
途中解約 | 可能 | 原則不可 |
ゆうちょの個人年金保険に関する疑問と回答
この章では、ゆうちょの個人年金保険に加入する方がよく抱く疑問を3つピックアップして、その解答を解説していきます。
①元本保証の有無は?
ゆうちょの個人年金保険である届くしあわせとハッピーロードは、どちらも変額個人年金保険です。
一般に変額個人年金保険は元本保証されないので、ゆうちょの個人年金保険も元本が保証されるのか気になる人が多いでしょう。
しかし、ゆうちょの個人年金保険は100%または110%の最低保証がされており、途中解約しなければ元本が減ることはありません。
②クーリングオフ制度は利用できる?
個人年金保険は一度加入すると解約しづらいので、そのせいで加入に躊躇している方がいるかもしれません。
特に、個人年金保険は加入後すぐに解約すると損をするので、加入後に気が変わって解約して、結局お金を損してしまうといった事態は避けなければいけません。
しかし、ゆうちょの個人年金保険は、届くしあわせ・ハッピーロードともにクーリングオフの対象となっており、申し込みの撤回や契約解除ができるようになっています。
解除できる期間などについては申込時にお問い合わせください。
③保険会社が破綻した場合はどうなる?
ゆうちょの個人年金保険である届くしあわせとハッピーロードは、三井住友海上プライマリー生命の商品であり、ゆうちょ自身の商品ではありません。
バブル崩壊後にいくつかの生命保険会社が破綻したことを知っている人は、もし将来三井住友海上プライマリー生命が破綻してしまったらどうなるのか心配するかもしれません。
しかし、ゆうちょの個人年金保険は生命保険契約者保護機構の対象なので、もし保険会社が破綻しても保険料が全て無駄になるといったことはありません。
ただし、全てが保護されるとは限らず、受け取れる年金額が減ったりする可能性もあります。
まとめ
では最後に本記事の内容をおさらいします。
ゆうちょの個人年金保険は現在「届くしあわせ」と「ハッピーロード」があり、どちらも最低保証のある変額個人年金保険となっています。他にも、財産形成年金定額貯金で老後資金を形成することも可能です。
ゆうちょの個人年金保険を選ぶメリットは以下の4つです。
- ネームバリューがある
- さまざまな魅力のある変額年金保険に加入できる
- 複数の保険商品から選択できる
- 全国のゆうちょ店舗で加入・相談できる
ゆうちょの個人年金保険とiDeCoの相違点は以下のとおりです。
個人年金保険 | iDeCo | |
---|---|---|
元本保証 | あり(途中解約しない場合) | なし(投資信託で運用した場合) |
リターンの目標値 | 設定できる | 設定なし |
所得控除 | 小 ・掛金は一部所得控除 |
大 ・掛金は全額所得控除 ・運用益は全額非課税 |
途中解約 | 可能 | 不可 |
ゆうちょの個人年金保険は最低保証100%があるので安心できますが、変額個人年金保険なのでもらえる年金額が確定しないなど、初めて加入する方は不安に感じる点もあるでしょう。
その場合は保険のプロに相談するのがおすすめです。
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まずは一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。