【FP監修】属人的株式の活用方法とは?事業承継と資本政策への影響をわかりやすく解説

相続・事業承継への備え2023.11.10 公開 | 2023/11/10 更新

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本稿では、属人的株式の定義、特性、及び事業承継と資本政策におけるその戦略的活用について詳述します。
専門的な視点から属人的株式の重要性を解析し、実践的な事例を通じてその効果を検証していきます。

※本稿は執筆された2023年11月時点での法令等を基に記述しています。最新の情報については官公庁等の発表を併せて確認することを推奨し、実際の導入に際しては専門家監修のもと進めてください。

1.属人的株式とは?

1-1. 属人的株式の定義

法人の株主は原則として、保有する数量に応じて平等な権利を有しています。

一方で属人的株式は、特定の株主に対して下記の3つの権利について独自の取扱いを可能とする制度です。

登記が必要な種類株式とは異なり、これら3つの権利について【属人的定め】を定款上で記載することが可能となります。

①剰余金の配当を受ける権利

剰余金の配当を受ける権利とは、属人的株式保有者が、会社の利益(剰余金)から定められた割合で利益を受け取る権利です。

これにより、特定の株主は会社の業績に直接連動する経済的利益を享受することができます。

例として

特定の株主のみ配当を多く受け取るようにしたい

といった制度設計が可能となります。

②残余財産の分配を受ける権利

残余財産の分配を受ける権利は、会社解散時に残った財産を株主に分配する権利です。

属人的株式保有者は、通常よりも高い割合でこの分配を受けることができます。

例えば、家族経営の会社で、創業者の退任後に財産を保護するためにこの権利が用いられることがあります。

③株主総会における議決権

株主総会における議決権は、属人的株式保有者が重要な企業の意思決定に投票する権利です。

この権利を活用する例として、家族経営の企業で創業者が後継者に経営権を委ねる際、株主総会での重要な議決に影響力を保持するために用いられます。

1-2. 属人的株式の特徴とメリット

経営の安定化

属人的株式を導入することで、特定の株主が長期にわたり企業経営に関与し、経営の方向性を一貫させることが可能になります。

これにより、経営の安定性が向上し、不確実性が低減されます。

事業承継の円滑化

属人的株式を利用することで、事業の承継がスムーズに行われるようになります。

後継者への権限移譲が容易になり、企業の将来に対する不確実性を減らすことができます。

意思決定の効率化

属人的株式を持つ株主は、重要な意思決定においてより大きな発言権を持たせることが可能です。

これにより、意思決定のプロセスが迅速化され、企業の機動性と効率性が向上します。

秘匿性

属人的株式と比較されることが多いものに種類株式がありますが、種類株式の導入には登記が必要となり、これは社外への公開情報であることを意味します。

一方で属人的株式は、株主総会の特殊決議を経て、定款上に定めることで制度導入が可能なため、社外に対する秘匿性の高さも特徴です。

2.属人的株式の事業承継への活用

属人的株式の事業承継への活用は、後継者への株式移譲をスムーズに行う手段です。

株主総会での議決権の重要な役割を保ちながら、後継者が経営を引き継ぐ過程で発生するリスクを減らします。

例えばですが、1株に対する議決権を100倍付与する設定などが可能です。

これにより、事業の継続性が保たれ、企業の長期的な安定に寄与します。

実践例と事例研究

事業承継中には、現経営者が認知症になるなど予期せぬ状況が発生することがあります。

このような場合、社長の議決権が多数派であっても、

社長の判断能力が低下した際には後継者の議決権を増やす

というような制度を定款に定めておくことで、経営の円滑化を図ることが可能です。

属人的株式を利用することで、議決権の調整が柔軟に行え、経営者の突然の能力喪失に備えることができます。

事業承継を考慮する企業にとって、属人的株式の導入は有効な選択肢と言えるでしょう。

3.属人的株式と種類株式との比較

3-1. 属人的株式と他の種類株式の違い

属人的株式は株主中心の制度で、特定の株主に独自の権利を提供しますが、種類株式は株式そのものに着目しています。

属人的株式は、相続や贈与による株式の移転で効力を失う場合がありますが、種類株式は新しい株主にもその効力が維持されます。

また、属人的株式は定款に記載されるのみで、種類株式は登記が必要です。

種類株式について

種類株式は、さまざまな特性を持つ株式をカテゴライズするための制度であり、9つの異なるタイプに分類されます。

これらは株式に付与される特定の権利や制限を基にしています。

例えば、一部の種類株式では、特別な配当権や議決権の制限、株式の譲渡制限などが設定されます。

これにより、企業は経営のニーズや目標に合わせて、最適な種類の株式を発行することができます。

3-2. 各種株式の選択基準と戦略

株式の選択は企業の目標と状況に応じて行うべきです。

属人的株式は、経営権の集中や事業承継をスムーズに行う場合に適しています。

一方、普通株式や種類株式は幅広い投資家から資本を集める場合にも有効です。

企業は自身の戦略に合わせて、最適な株式タイプを選択することが重要です。

4.属人的株式のデメリットと注意点

属人的株式のデメリットと注意点について考慮することは、その活用を計画する企業にとって不可欠です。

4-1.非流動性

属人的株式の設定は、非公開会社に限定されています。

また、特定の株主に紐づけられているため、他の株主などに自由に譲渡することが難しくなります。

4-2.経営の一体感を損なう可能性

特定の株主に多大な権限を与えることで、他の株主との間に不均衡が生じ、経営上の緊張や対立を引き起こす可能性があります。

そのため、属人的株式を導入する際には、全ての株主間のバランスを考慮し、適切なコミュニケーションと透明性を確保することが重要です。

4-3.相続や贈与の際には注意

株式の移転に伴う権利の変更や、新たな株主との合意形成が必要になるため、これらのプロセスには細心の注意と計画が求められます。

属人的株式の導入を検討する企業は、これらのデメリットと注意点を十分に理解し、経営戦略に適切に組み込むことが肝要です。

正しく管理されれば、属人的株式は企業の成長と発展に寄与する強力なツールとなり得ます。

5.属人的株式の導入手続

属人的株式を導入するための手続きには、いくつかの重要なステップがあります。

まず、企業は属人的株式の導入を検討する際、その目的と期待される効果を明確にする必要があります。

次に、属人的株式の具体的な条件や権利を定めるため、株式会社の定款を修正します。

この定款の変更は、株主総会の承認を必要とし、特殊決議(議決権の4分の3以上)が必要です。

手続きの一環として、属人的株式に関する条項を定款に明記し、それが株主によって承認された後、法務局に定款変更を届け出ます。

このプロセスは、企業の法的枠組み内で行われるため、法律の専門家の助言を求めることが一般的です。

また、属人的株式の導入に際しては、株主間の合意形成や、将来的な事業展開や資本政策に与える影響を検討することも重要です。

この手続きを通じて、企業はより効果的な経営管理と事業の発展を目指すことができます。

まとめ 属人的株式の活用による事業承継と資本政策への影響

属人的株式の概要からメリット・デメリットに分けて解説してまいりました。

適切に活用することで柔軟な設計が可能なため、企業経営や事業承継に有効です。

一方で、その柔軟さ故にどのような内容にするのかはしっかりと設計をする必要があります。

導入を検討される際には法律家などの専門家へご相談してください。

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