【FP監修】住宅ローンの繰り上げ返済ってどう?メリット・デメリットも含めて専門家がわかりやすく解説!
住宅を購入する際にほとんどの方が組む住宅ローンですが、最長で35年や40年という長期の返済となります。
たとえば、30代で住宅を購入した場合、自身が働く期間よりも長く住宅ローンを返済することになりますよね。
そこで検討されるのが繰り上げ返済です。
晩婚化の流れもあり、住宅を購入する際に、すでに繰り上げ返済を念頭に置いて返済計画を立てていかないと、老後の資産を圧迫することになりかねません。
本記事では繰り上げ返済のタイプやメリット・デメリット、実際に繰り上げ返済を行うタイミングやそれに向けた準備の方法を解説していきます。
繰り上げ返済には2タイプがある
まずは借入残高の一部を繰り上げ返済する2つのタイプを解説します。
繰り上げ返済を検討する際には、それぞれの特徴を理解したうえでご自身にはどちらが適しているのかを判断することが欠かせません。
実際にはこの他に一括で返済する方法もあります。
① 返済期間短縮型
返済期間短縮型の特徴
毎月の返済額は変わらないが、当初の返済期間よりも短くなる
返済期間短縮型のメリット
短くなった期間に支払う必要があった利息分の支払いが不要になるため、利息軽減効果が高い。
② 返済額軽減型
返済額軽減型の特徴
毎月の返済金額が減るが、当初の返済期間は変わらない
返済額軽減型のメリット
月々の返済額を減らすことができるので、毎月の家計改善効果を実感できる。
自分に適しているのはどちらの繰り上げ返済?
実際に繰り上げ返済を行う際に特徴とメリットを考慮して、どちらを行うか検討することが必要です。
基本的には
- 毎月の生活費に余裕はあるが老後の年金に不安がある方→返済期間短縮型
- 毎月の生活費の赤字が気になる方→返済額軽減型
というふうに検討していきます。
これに加えて金融機関のホームページなどでシミュレーションを行い、確認することも可能です。
繰り上げ返済のデメリット
次に、繰り上げ返済のデメリットを考えていきましょう。
実際に繰り上げ返済を行う際には、次の2点に気を付ける必要があります。
デメリット① 住宅ローン控除額が減ってしまうかも
現在、住宅ローンを組む際に適用される国の制度の中で最も有名といっても過言ではないのが、住宅ローン控除です。
住宅ローン控除とは
一定期間(現行制度では新築購入時などでは13年)にわたって、年末時点の住宅ローン残高の0.7%、もしくは一定の上限(現行制度で一般住宅であれば、3,000万円)の0.7%の低い方が、その方の所得税と住民税の一部から控除される制度
です。
たとえば、住宅ローン残高が3,000万円以上であれば年間で約21万円が控除されます。
当然、この一定期間内に繰り上げ返済を行うと、住宅ローン残高が3,000万円未満になった場合、本来想定していた控除が受けられないといったケースもあります。
少なくとも、住宅ローン控除が受けられる期間内には、住宅ローン残高を計算しながら繰り上げ返済の金額を設定する必要があります。
デメリット② 団体信用生命保険の保険金額が減少するかも
住宅ローンを組むと、ほとんど必須で団体信用生命保険に加入することになります。
団体信用生命保険とは、実際に住宅ローンを組む方が死亡・高度障害となった際に保険を使って、住宅ローン残高を一括返済します。
つまり、3,000万円の住宅ローンを組むと同時に3,000万円の死亡保険に加入することができるのです。
そういった意味では遺族に対して最低限、住宅を残すことが可能になるという制度です。
繰り上げ返済した分だけ保障の額も減少する
繰り上げ返済を行い、仮に全額返済するとその分の死亡保障も失うことになります。
たとえば、必死に働いて2,000万円を貯めたとします。
その際に住宅ローン残高も2,000万円、思い切って一括の繰り上げ返済を行ったとします。
当然、住宅ローンの返済は完了しますが、もし、その次の年に万一死亡してしまったら…
たらればの話になりますが、繰り上げ返済をしていなければ、保険が適用されて住宅ローンの残高もなくなり、貯めてきた2,000万円もお手元に残るというケースもあるのです。
そういった意味では、貴重な住宅ローンという名の保険を残しておくメリットも少なくありません。
繰り上げ返済のベストなタイミングは?
では、どういったタイミングで繰り上げ返済を行っていくべきかを考えていきましょう。
これまでに挙げたデメリットまで考慮すると、まずは住宅ローン控除の期間に繰り上げ返済を行い、想定していた控除が得られなくなるということは避けるべきです。
次に団体信用生命保険の考え方ですが、保険の必要性を考えますと、例えば働いている期間は繰り上げ返済しないと考えるのも一つですし、お子様がいらっしゃるご家庭であれば、お子様の教育費がかかる大学卒業まで繰り上げ返済を行わないというのも一つです。
ただし、住宅ローンは当然長く払えば払うほど、利息分を多く払っているということも考えていかないといけません。
現在のように実効金利が1%を下回っているケースであれば、無理に繰り上げ返済していくよりも、余剰資金を別の金融資産で運用するというのも一つの方法です。
繰り上げ返済を行わずに資産運用をしたケース
ここで例として
- 金利タイプ:変動金利0.5%
- ローン期間:35年返済
- 返済タイプ:元利均等
という住宅ローンを組むと仮定して、住宅ローン控除が終了した13年後に繰り上げ返済を行うか検討します。
金利が上がっていなければ、残高2,000万円、年間返済額約93万円に対して、利息部分は約10万円になります。
2,000万円の余剰資金があった時、一括の繰り上げ返済を行うか迷うところですが、その2,000万円を金融資産として運用した場合、運用率1%だとしても、年間20万円資産を増やすことができますので、繰り上げ返済よりも運用した方が効率よく自身の資産を増やすことができます。
一方で、金利が10年目に1%に上昇した場合、13年後の年間返済額は約99万円に対して、利息部分は約20万円になります。
上記と同様の資産運用率1%であれば、住宅ローンの利息分が利益を飲み込んでしまいます。
このような金利上昇があれば、自身の金融資産と相談して繰り上げ返済を考慮する必要もあります。
将来の繰り上げ返済に向けた準備
これまでの前提を踏まえつつ、より良い繰上げ返済を行うための方法をひとつ挙げさせていただきます。
その方法は、貯蓄型の生命保険の活用です。
資産形成期に自身や家族を守りながら、繰上げ返済に向けて上手にお金を貯めていきます。
住宅ローンを組むと団体信用生命保険に加入できますので、死亡してしまっても遺族に住宅を残すことができます。
加えてお子様がいらっしゃる家庭の関心ごとは教育費ではないでしょうか。
資産形成期に死亡してしまった場合、想定していた教育費が捻出できずに、本来受けられたはずの教育を諦めさせてしまうことが想像できます。
そのために貯蓄型の生命保険を活用し、死亡してしまった場合の教育費に備える方が増えてきました。
たとえば、生まれたばかりのお子様がいる35歳の夫婦がいたとしましょう。
お子様が生まれた機会に住宅を購入し、15年で支払い満了の貯蓄型の生命保険に加入したとします。
適切な保険を選択していれば、支払満了後は運用により運用後に解約した際に払い戻される金額は拠出した金額よりも増える場合が多いため、18年後の53歳時点ではお子様の大学進学費用として活用することが可能です。
一方で、その期間に並行して銀行預金もできていれば、銀行預金から大学費用を拠出した上で生命保険の運用を続けて、更に解約返戻金を増やしたうえで65歳時点で生命保険を解約して繰り上げ返済の原資に充てます。
そうすることで
- 資産形成期を守りつつ、
- 拠出した金額を運用により増やして、
- 老後資金も圧迫されない、
という繰上げ返済が可能になります。
まとめ
住宅ローンを組む方の年齢や家族構成、貯蓄可能な金額によっても適切な繰上げ返済の方法は変わってきます。
繰上げ返済なんて何十年後のこと・・・と考えることを後回しにしがちですが、ほとんど多くの方が遅かれ早かれ検討しなければならないこともまた事実です。
関心をお持ちいただけたら、次は行動に移すことをお勧めいたします。
是非ともお近くの専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。
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