【FP監修】給料にかかる税金の種類|所得税・住民税の計算方法と対策をプロが解説!
この記事では所得税と住民税について、正しい計算方法から税金対策に至るまでプロがわかりやすく解説していきます。
「所得税と住民税を少しでも安くしたい」
「税金の正しい計算方法を知りたい」
という方は、ぜひ参考にしてください。
記事監修者
ファイナンシャルプランナー
綾目脩志
給料から引かれる税金は2種類
給料から引かれる税金は、「所得税」と「住民税」の2種類です。
所得税は超過累進税率方式を採用しているため、課税所得金額によって税率が5〜40%の間で変わります。
それに対して、住民税は一律で10%です。
さらに税金とは別に、雇用保険や健康保険、厚生年金といった「社会保険料」も給料から引かれています。
このように給料からは、さまざまな税金や保険料が引かれているため、会社員の手取り額は「額面金額の7〜8割程度」と言われています。
ただし課税額は、扶養家族や生命保険の有無で変化するため、この記事を参考にして計算したり、給与明細を見る習慣をつけたりすると良いでしょう。
参考:国税庁|所得税の税率
所得税の正しい計算方法とは?
所得税を正しく計算するには、以下の3つのステップがあります。
- 所得金額を算出する
- 課税所得金額を算出する
- 所得税額を算出する
それぞれ解説します。
所得金額を算出する
まずは「給与収入」から「給与所得控除額」を引いた「所得金額」を算出します。
給与収入とは、その年の1月1日から12月31日に得た収入で、一般的な「年収」のことです。
ただし交通費や児童手当、育児休業給付金は除外されるため、注意してください。
次に給与所得控除額は、収入金額に応じて以下のようになります。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
例えば年収400万円の場合は、給与所得控除額は124万円(400万円 × 20% + 44万円)のため、所得金額は276万円(400万円 – 124万円)になります。
所得金額が算出できたら、次は「課税所得金額」を算出しましょう。
参考:国税庁|給与所得控除
課税所得金額を算出する
次に所得金額から「所得控除額」を引いた「課税所得金額」を算出します。
所得控除は配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除など、全部で15種類あります。
以下の表に種類と条件をまとめたので、参考にしてください。
控除の種類 | 適用される条件 |
---|---|
雑損控除 | 災害や盗難などで資産に損害を受けた |
医療費控除 | 支払った医療費が一定額を超える |
社会保険料控除 | 社会保険料を支払った |
小規模企業共済等掛金控除 | 共済契約に基づく掛金等を支払った |
生命保険料控除 | 生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った |
寄附金控除 | 特定寄附金を支出した |
障害者控除 | 所得税法上の障害者に当てはまる |
寡婦控除 | 納税者自身が寡婦である |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親である |
勤労学生控除 | 納税者自身が勤労学生である |
配偶者控除 | 所得税法上の控除対象配偶者がいる |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下、配偶者の合計所得が48万円以上133万円未満 |
扶養控除 | 所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる |
基礎控除 | すべての人に適用される |
例えば高校生の子どもが1人いると38万円の扶養控除が受けられるため、所得金額が276万円の場合、課税所得金額は238万円(276万円 – 38万円)になります。
ただし所得控除のうち、雑損控除や医療費控除、寄附金控除は会社の年末調整では対応できません。
その場合は個人で確定申告をする必要があるため、注意してください。
そして課税所得金額が算出できたら、最後に「所得税額」を算出しましょう。
所得税額を算出する
最後に、課税所得金額に「所得税率」を掛けた金額から「控除額」を引いて、所得税額を算出します。
所得税率には「超過累進課税制度」が採用されているため、課税所得金額に応じて以下のように上がります。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
また控除額も課税所得金額に応じて上記のように変化するため、課税所得金額が238万円の場合、所得税額は14万500円(238万円 × 10% – 9万7500円)になります。
このように所得税額が決まるまでには、さまざまな控除額が引かれているため、一人ひとりの納税額は必ず異なります。
適正な家計管理をするためにも、給与明細を確認する習慣をつけると良いでしょう。
参考:国税庁|所得税の税率
住民税の正しい計算方法
住民税額は「所得割」と「均等割」を合わせた金額です。
所得割とは課税所得金額に対する税率で、区市町村民税が6%、道府県民税・都民税が4%で合計10%です。
そして均等割とは、納税者に一律で割り当てられる税額のことで、所得金額にかかわらず年間5000円を支払います。
例えば課税所得金額が238万円の場合、所得割は23万8000円(238万円 × 10%)、均等割は5000円のため、住民税額は合計24万3000円です。
給料から引かれる税金としては所得税が注目されがちですが、課税所得金額によっては住民税の方が高くなります。
自分は住民税をいくら支払っているかを、給与明細で確認してみると良いでしょう。
サラリーマンにおすすめの税金対策を3つ紹介
サラリーマンにおすすめの所得税や住民税対策は、以下の3つです。
- 確定拠出年金
- ふるさと納税
- 生命保険料控除
それぞれ解説します。
確定拠出年金
確定拠出年金とは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に、自分で老後資産を作るための私的年金制度です。
また確定拠出年金の中でも、企業型を「企業型DC」、個人型を「iDeCo(イデコ)」と呼びます。
そして確定拠出年金のメリットは、以下の2つです。
- 売却益等が非課税
- 所得税と住民税が軽減される
通常は金融商品を運用すると、運用益等に20.315%が課税されますが、確定拠出年金の場合は完全非課税です。
さらに確定拠出年金で支払う毎月の掛金は、全額所得控除されるため、当年分の所得税と翌年分の住民税が軽減されます。
実際にどれくらいの節税効果があるのか、以下の条件で試算してみましょう。
- 職業:会社員
- 年収:500万円
- 確定拠出年金の掛金:毎月23,000円
確定拠出年金なし | 確定拠出年金あり | 節税額 | |
---|---|---|---|
所得税額 | 135,500円 | 107,900円 | 27,600円 |
住民税額 | 240,500円 | 212,900円 | 27,600円 |
合計 | 376,000円 | 320,800円 | 55,200円 |
上記の結果から分かるように、確定拠出年金によって5万円ほどの節税効果が見込めます。
節税を考えている方は、まずは確定拠出年金を始めましょう。
ふるさと納税
ふるさと納税とは、自分の住んでいる地域ではなく、応援したい地方自治体に納税できる制度です。
ふるさと納税のメリットは、以下の2つです。
- 地方自治体の名産品を受け取れる
- 所得税と住民税が減額される
まずふるさと納税をすると、納税額の30%相当のお米やお肉、フルーツなど、その地方自治体の名産品を返礼品として受け取れます。
また、納税額のうち2,000円を超える金額は、翌年の所得税と住民税から減額されます。
実際にどれくらいの節税効果があるのか、以下の条件で試算してみましょう。
- 職業:会社員
- 年収:500万円
- 家族構成:夫、妻、子ども(15歳)
上記の場合、ふるさと納税の上限額は50,000万円が目安です。
そのため50,000円のふるさと納税をすると、翌年の所得税と住民税から48,000円減額され、15,000円相当の返礼品がもらえます。
このようにふるさと納税は、実質自己負担額2,000円のみで、地域の名産品がもらえるお得な制度です。
節税を考えているサラリーマンの方は、ふるさと納税を活用しましょう。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、支払った生命保険料に応じて、その年の所得税と住民税が軽減される制度です。
また生命保険料控除には、2012年以降が契約始期の「新制度」と、2011年以前が契約始期の「旧制度」があり、「新制度」は以下の3つに分けられます。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
そして3種類の生命保険料控除は、それぞれ次のように計算されます。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間の支払い保険料 | 控除額 | 年間の支払い保険料 | 控除額 |
〜20000円 | 支払い保険料の全額 | 〜12000円 | 支払い保険料の全額 |
20001円〜40000円 | (支払い保険料×0.5 +10,000) 円 | 12001円〜32000円 | (支払い保険料×0.5 +6,000) 円 |
40001円〜80000円 | (支払い保険料×0.25+20,000) 円 | 32001円〜56000円 | (支払い保険料×0.25+14,000) 円 |
80001円〜 | 一律40,000円 | 56001円〜 | 一律28,000円 |
実際にどれくらいの節税効果があるか、以下の条件で試算してみましょう。
- 職業:会社員
- 年収:500万円
- 年間保険料:一般生命保険料8万円
上記の場合、所得税と住民税を合わせて、7000円程度税金が安くなります。
さらに年間保険料が8万円で、3%の運用が出来た場合、節税額も加味すると約12%の運用となるため、NISAなどと比較しても優れた資産形成と言えます。
生命保険に加入されている方は、ぜひ有効活用してください。
まとめ
給料から引かれる税金は、「所得税」と「住民税」の2種類です。
所得税は超過累進税率方式を採用しているため、課税所得金額によって税率が変わりますが、住民税は一律で10%です。
例えば年収400万円で課税所得金額が238万円の場合、所得税額は約14万円、住民税額は約24万円で、合計で約38万円も税金として引かれます。
このように知らないうちに、多額の税金が給料から引かれているため、サラリーマンの方は確定拠出年金やふるさと納税、生命保険料控除などを活用して、税金対策をすると良いでしょう。
しかし自分1人で控除額を確認したり、税金対策を考えたりするのは難しいという人もいるでしょう。
そのような際には、一度専門家と面談してみてはいかがでしょうか。
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