【FP監修】外貨建て保険は相続に使える?プロが活用方法をわかりやすく解説!
近年、外貨建て保険への加入数も増え、ご家族への生活保障や高い積立利率によって資産形成の一環として加入をされる方が増えています。この記事では、外貨建て保険に対して、切っては切れない保険金の相続などに対して解説していきます。
記事監修者
SYN Group 株式会社
大塚 匠
生命保険の保険金に相続税はかかる?
外貨建て保険に限らず、生命保険で受け取るお金には、万が一死亡した際に受け取る死亡保険金や入院や手術をした際に受け取る入院給付金、手術給付金、そして長期間に渡り働けなくなった際に受け取る就業不能給付金などさまざまな種類があります。
生命保険でお金をなんらかの理由で受け取る場合、所得税や贈与税、相続税といった税金がかかるのは一般的です。(※非課税で受け取れるものもあります。)
生命保険を契約する際には、
- 誰が保険料を支払い(契約者)
- 誰に保険をかけ(被保険者)
- だれが受け取るか(保険金受取人)
によって受け取る保険金にかかる税金の区分(相続税・所得税・贈与税)が変わっていきます。
上記図のように、条件によって税金の種類が変わってきます。
そしてここでは、死亡保険金に対してどのようなケースで相続税がかかってくるのかを詳しく見ていきます。
事例紹介
契約者 | 父(本人) |
被保険者 | 父(本人) |
保険金受取人 | 母(配偶者) |
契約者および被保険者である父親が死亡し、死亡保険金4,000万円を保険金受取人である母親が受け取りました。
その他に、相続する財産は1億5,000万あり、その財産は、母親が1億、2人の子供に2,500万ずつ受け取りました。その他、借入金の300万、葬式代200万の計500万を保険金から支払った。この場合の税金はどうなるでしょうか?
まず、保険料負担者である被保険者の父親が死亡した場合、死亡保険金は相続税の課税対象となります。
そして母親が受け取った死亡保険金3,000万はみなし相続財産となり、遺産の総額に含められます。
ただし、このケースは「死亡保険金の非課税」という税制上の優遇を受けることが可能です。
死亡保険金の非課税金額とは
死亡保険金には、残されたご家族の生活保障という大切な役割がある為、一定の死亡保険金額が非課税とされています。
法定相続人が保険金を受け取る場合に限って、「500万円×法定相続人の人数」が非課税金額になります。つまり今回のケースの場合下記のようになります。
- 法定相続人 : 妻・子ども2人
- 非課税金額 : 500万円×3名=1500万円
- 課税価格 : 4000万円ー1500万円=2500万円
※非課税金額計算上の法定相続人数には、相続を放棄した者も含まれます。
この事例では、子供が相続放棄をした場合でも、母親が受取る死亡保険金から1,500万は控除できますが、母親が相続放棄をした場合に限り、非課税金額が適用されません。
妻 | 子 | 子 | 合計 | |
相続財産 | 10,000 | 2,500 | 2,500 | 15,000 |
死亡保険金 (非課税金額) |
4,000 (▲1,500) |
– | – | 2,500 |
債務控除 葬儀費用 |
▲300 ▲200 |
▲500 | ||
課税金額 | 12,000 | 2,500 | 2,500 | 17,000 |
※配偶者控除等は考慮していません。
※債務・・・差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるもの。
※葬儀費用・・・葬式費用は債務でないが、相続税の計算の際は、遺産総額から差し引くことができる。
(国税庁HPより)
課税遺産総額の計算
課税価格合計 17,000万円 - 基礎控除額4,800万円(3,000万円+600万円×法定相続人数) = 課税遺産価格12,200万円
このようになります。
相続税の総額計算
ここで、課税遺産総額を全て法定相続分通りに相続したと仮定して相続税額を計算してみます。
課税遺産総額 : 12,200万円
法定相続割合 | 課税遺産額 | |
妻 | 2分の1 | 6,100万円 |
子 | 4分の1 | 3,050万円 |
子 | 4分の1 | 3,050万円 |
それぞれが納める相続税額
これまでで、相続税の総額を計算し1,950万円と算出することが出来ました。
ここからは、家族それぞれがどのような割合で負担していくかを考えてみましょう。
- 相続税総額1950万円 × 妻(12,000万円/17,000万円) = 1,376万円
- 相続税総額1950万円 × 子(2,500万円/17,000万円) = 286万円
- 相続税総額1950万円 × 子(2,500万円/17,000万円) = 286万円
(1000円未満切り捨て)
配偶者の税額控除
相続税の配偶者の税額控除とは、配偶者が相続した課税遺産総額の1億6,000万円まで、もしくは、配偶者の法定相続人までであれば、課税されないという制度です。
上記を今回のケースに例えると、配偶者の納めるべき相続税は1億6,000万円までは非課税となる為、子供2人がそれぞれ、286万円(千円以降省略)、計572万円(千円以降省略)を相続税として納付をいていくこととなります。
それ以外にも、未成年者控除・障害者控除・贈与税額控除と条件が異なると控除の種類、計算式が異なります。
外貨建て保険の為替リスクと相続の関係性
近年、円建ての生命保険に次ぎ契約数が伸びている外貨建て保険だが、円建て保険とは違い払い込んだ保険料が外貨で運用される。米ドルや豪ドル、ユーロ等の外貨があります。
外貨建て保険は、前述したとおり外貨で運用する為に払い込む際や、保険金を受け取る際、解約返戻金を受け取る際には為替の影響を大いに受けることや、相続をする際にも為替リスクをケアすることが最大のポイントとなります。
もちろん、保険料を払い込む際は、円安より円高のほうが払い込む保険料は少なくなり、保険金や解約返戻金を受け取る際は、円高より円安の方が受け取る金額は多くなります。
しかしながら、相続財産(相続財産評価)という観点からすると、
- 相続時に円高・・・相続財産評価が減る
- 相続時に円安・・・相続財産評価が増える
となる為、相続税額からすると、円高になるほうがよいと言えるでしょう。
一方で保険金は円安時に増加するため、一概に為替動向が資産全体に及ぼす影響については言及できません。
為替リスクとの付き合い方、相続との関係性
外貨建て保険は円で受け取れるほか、外貨でも受け取ることができる仕組みを活用し、円高、円安の場合それぞれで考えていくことできます。
*円安の場合
- 円建てで受け取る。
- 保険金や解約返戻金が増加
- 相続財産も増加
*円高の場合
- ドル建てで受け取る。
- 相続財産は、円建てでの計算の為に、相続税が低くなる。
円高の場合、円ベースで資産が減ってしまう為、為替損になってしまうため、保険金を受け取る場合は、米ドルで受け取ることも選択肢に入りますが、相続財産評価額は円ベースで評価を受けるため、下がることになります。
その為、米ドル建てで受け取ることによって為替損を表面化することなく、相続財産を圧縮することができ、円安になったタイミングで円に換金をするという流れがベストなシナリオとなるでしょう。
上記のような流れを作ることによって、円安になろうが円高になろうが負けのない仕組みを作ることも可能になります。
外貨建て保険は、外貨で運用することから「為替リスク」がつきもので、近年そういったことから苦情件数も増えています。
しかし、主にその通貨の国債で運用することから円建てに比べてレバレッジ効果は高くなる為、為替リスクを理解をすることや出口戦略を工夫することによって今後も高い期待と共に、資産形成のひとつの選択肢として期待が持てるでしょう。
まとめ
外貨建て保険や円建て保険のみならず、相続に該当する資産は多々ある為、相続に対する知識、控除について理解をすることは重要なポイントになります。
相続をする際に万人の悩みとして、相続税を減らしたいというもの対して現金で資産を持つのではなく、外貨建て保険に形を変えて相続対策することもできます。
何の為に外貨建て保険に加入をするのか?相続なのかご家族の生活保障なのか用途によって保険料や保険金額が決まってきます。
具体的な問題を把握してから、理想の形で相続を行うための施策を策定するに至るまで、信頼の置ける担当者に相談をすることが欠かせないでしょう。
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