【FP監修】外貨建て保険は危険?やってはいけないケースやトラブルについて専門家がわかりやすく解説
外貨建て保険は、高い利回りを期待できる一方で、しっかりと注意すべきポイントがあります。
本記事では、外貨建て保険のメリット・デメリットをお伝えした上で、注意点やリスク、多く発生している苦情やトラブルについても専門家が詳しく解説していきます。
ご参考の一助になれば幸いです。
記事監修者
ファイナンシャルプランナー
五十嵐 真一
外貨建て保険の注意点
現在の日本は未曽有の低金利状況下に置かれています。
一方でアメリカをはじめとする諸外国は、コロナ終息に伴って金利を引き上げ始めています。
このような背景を含めて、利率の高い外貨建て保険に加入されていたり、検討をしている方も多いのではないでしょうか?
外貨建て保険は、保険という側面に加えて、リスクのある運用商品としての側面もあります。
このようなリスクを理解しないで加入する事は絶対にやってはいけません。
リスクを理解せずに加入をしてしまうと、将来に思った通りの保険金や解約返戻金を受け取れず困ってしまう可能性があるからです。
今回は、外貨建て保険のメリットやデメリット、注意すべきポイントをわかりやすく説明していきます。
また、トラブルや危険性もお伝えしますので、外貨建て保険への加入を迷っている人だけではなく、既に加入しようと決めている人にとっても参考になる内容となっていますので、ぜひお役立てください。
外貨建て保険とは?
外貨建て保険とは、外貨で運用している生命保険です。
一般的な外貨建て保険は、アメリカドル(以下、米ドル)かオーストラリアドル(以下、豪ドル)で運用されるものが多いです。
また保険の種類としては、終身保険、養老保険、個人年金保険などの貯蓄性のあるものが主体です。
外貨建て保険は、外貨で保険金や保険料、積立金の運用利率(予定利率)等が決まっている為、日本で販売されている保険ではありながら海外の高い金利を享受できる商品です。
外貨建て保険のメリットについて
①海外の高金利を享受できる
そもそもなぜ、保険会社がわざわざ外貨建て保険を販売しているのでしょうか?
日本では、超低金利が長年続いている為、円で安全に運用していこうとしても増やす事が出来ません。
つまり、現在の日本において、生命保険会社は円建ての貯蓄性が高い商品を開発することができないのです。
一方で、円よりも金利が高い外貨で運用すれば、運用の利率を高く設定した商品を開発する事ができます。
なので、生命保険会社は、契約者のニーズを満たすために外貨建て保険を販売しています。
日本円での生命保険よりも保険料が割安
このような理由で、外貨建て保険の保険料は円建ての保険と比較して割安です。
これは、加入者にとってメリットの一つです。
貯蓄性が高い
金利水準の差は、月々の保険料が割安になるだけでなく、貯蓄性にも影響します。
日本円のように低金利の場合、貯蓄性には期待できませんが、高金利の外貨で運用することで貯蓄性を高められます。
また日本は食料品など輸入に頼る部分が大きいため、外貨を保険で保有することでインフレ対策にも繋がります。
②将来受け取る保険金等は変動する
外貨建て保険の保険金や保険料、解約返戻金等は外貨ベースを基準に決まっているので、その金額は原則、変動せず固定されています。
つまり、外貨を基準に考えると、安全性や貯蓄性が高く魅力的な保険ということになります。
しかし、日本円で考えると保険金等は変動します。
あくまでも外貨で固定されている為、日本円で支払ったり、受け取ったりする場合は為替レートの影響を受けるので、変動していくということです。
例①:為替による毎月の保険料の変動(保険料は100ドル/月)
- 1ドル90円の時:毎月の保険料は9,000円
- 1ドル100円の時:毎月の保険料は10,000円
- 1ドル110円の時:毎月の保険料は11,000円
つまり、毎月支払う保険料は為替によって変動していく為、月々の保険料の支払いが微増減するということです。
例②:為替による受け取る保険金変動(保険金10万ドル)
- 1ドル90円の時:受け取る保険は900万円
- 1ドル100円の時:受け取る保険は1,000万円
- 1ドル110円の時:受け取る保険は1,100万円
受取時の為替レートが多少上下したとしても、日本円建てでは大きな変動となることがあります。
リスクというのは日本語では不確実性と言われており、上記のように想定金額より減少してしまうこともあれば、増加することもあるというように二面性があるものです。
受取時に想定と違った、ということがないようにしっかりと加入時からFPなどの専門家と話し合って検討していくことが重要です。
外貨建て保険の苦情やトラブルが増加?
近年、外貨建て保険に加入しているお客様からの苦情が増えています。
外貨建て保険は、為替リスク等、事前にしっかり把握しておくべきリスクがあります。
苦情は5年で3倍に増加
生命保険協会の調べでは、2019年度の「外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数」は、2,822件でした。
苦情件数は年々急激に増加しており、2014年度が922件だったのに対して、約3倍にも増加しています。
苦情件数が増えている一つの理由は、昨今の日本の低金利を踏まえて、銀行窓口や保険代理店での外貨建て保険の取り扱いが増えていることが挙げられます。
苦情が増加した理由は?
では、具体的にどんな苦情があるのか見ていきましょう。
苦情が多い層は、高齢の契約者や、投資経験が少ない方です。
特に多い苦情内容として
為替の変動について伝えられなかった
元本割れのリスクを知らされなった
などです。
これは、外貨建て保険のリスクをしっかりと把握しないまま加入していることに起因します。
この急激な苦情件数を踏まえて、金融庁がガイドラインの策定等を要請しました。
保険加入時は、商品のメリット・デメリットを自分自身がしっかりと理解できるまで、専門家とコミュニケーションをとることが必要です。
また、銀行で加入される方も多いので、預金と同じ感覚で始めてしまってトラブルになるケースも多発しています。
外貨建て保険のリスクやデメリットは?
相場変動により受取金額が減少してしまうかもしれない
円ではなく、外貨で運用されていることにより、為替による損が生じてしまう可能性があります。
例えばですが
- 保険料を払うタイミング→円高
- 保険金や解約返戻金を受け取るタイミング→円安
になっていれば、円での受け取る金額が増える事となりますが、その逆の場合は損を被ってしまう可能性があります。
リスク分散の為、預貯金や保険等のその他の金融資産により為替を分散させていくことが重要です。
為替手数料が発生
保険料を支払う際や保険金などを受け取る際には、円⇔外貨へと保険会社が為替取引を行っています。
その際に、保険会社により金額は異なりますが為替手数料が発生します。
一般的にはTTM±50銭程度を採用している会社が多く、クレジットカード等の為替手数料と比較すると割安に設定されています。
また中にはTTM±1銭という非常に安い為替手数料を採用している保険会社もあるため、加入を検討する際には参考にしてみてください。
日本円換算では元本保証されない
外貨建て保険を元本保証だと思っている方も多くいらっしゃいますが、円建てで元本が保証されるのではなく外貨建てで運用資金が保証される、という意味です。
つまり、日本円換算をする際には為替レート次第で元本を下回るリスクがあります。
資金が目減りするリスクを許容できるかどうかで、外貨建て保険が選択肢に入るかが決まるのではないでしょうか。
毎月支払う保険料が固定されない
外貨建て保険料の支払いは外貨ベースで固定されているため、日本円に換算した保険料は為替変動の影響を受けます。
例)毎月の保険料が100US$の場合
1ドル=90円:毎月の保険料は9,000円
1ドル=110円:毎月の保険料は11,000円
このように、日本円で保険料を支払う場合、金額が固定ではなく為替レートによって変動します。
月々の保険料が固定ではない、という点もしっかり抑えておくべきポイントです。
※一部日本円で固定できる保険商品も存在します。
外貨建て保険に加入する時の注意点
為替手数料や保険関係費の確認を怠らない
外貨建て保険には、為替手数料とは別に保険関係費がかかります。
これは外貨建て保険に限らず通常の保険商品でも契約者が負担すべき費用の一種です。
保険関係費の内訳は各保険会社によって異なり、継続年数等によって変わるため一概に比較できません。
資産を運用する上ではリスクと同様にコストにおいても、内容と内訳を理解しておくとよいでしょう。
早いタイミングでの解約は損になる
保険商品によっては解約の際に、解約控除が発生する可能性があります。
その為、解約控除により思っていた金額を受け取れないという危険性もあります。
保険契約は基本的に中長期資金の準備に活用する金融商品です。
契約する時には解約控除率も確認しておいた方が良いでしょう。
まとめ
外貨建て保険の魅力をお伝えすると共に、注意点や危険性、トラブルや苦情となるケースもお伝えしてきました。
外貨で運用する為、難しいポイントや確認しなければならない点が多くあります。
やってはいけないポイントは内容や仕組みを理解せずに加入してしまうことです。
外貨建て保険は投資に近い性質を持っているとはいえ、あくまで生命保険です。
ご自身の将来の生活や大切な家族の為に必要な準備ですので、一人で考えていくよりも、保険の専門家へ相談してみましょう!
取り寄せた資料を持っていって、詳しく説明を聞くだけでもいいと思います。
そこで疑問点や注意点をしっかり確認し、自分にあった最適な商品や設計を比較検討してもらう事が重要です。
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