【FP監修】医療費控除とは?対象になる費用や申請の手順4ステップを解説
医療費控除を活用したいものの、制度の概要や申請方法がわからないという方は多いのではないでしょうか。
本記事では、医療費控除の要件や申請する4つの手順について解説します。
お得な制度を活用したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
記事監修者
金融ライター
松田竜太
医療費控除とは
医療費控除とは、1年間に10万円以上の医療費を支払った場合※に、納めた所得税の一部を還付金として受け取れる制度です。
確定申告が毎年必要な個人事業主だけでなく、サラリーマンでも医療費控除を申請することで還付金を受け取れる可能性があります。
「確定申告書」と「医療費控除の明細書」を作成し税務署に提出するだけで申請でき、領収書の添付は必要ありません。
本人のほかに、配偶者や親族のために支払った医療費も対象になるケースがあります。
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%以上の医療費を支払った場合
医療費控除の要件
医療費控除の要件を把握するためには、以下2つのポイントを押さえておく必要があります。
- 対象者
- 対象期間
それぞれ詳しく解説します。
医療費控除の対象者
医療費控除は、納税者本人、そして本人と生計を一にする配偶者やそのほかの親族のために支払った医療費が対象です。
同居は要件となっておらず、以下のような状態は生計を一にしているとみなされます。
- 生活費や療養費などを常に送金している
- 学校や仕事の休日に生活を共にしている
たとえば、別居する親の入院費を息子が常に支払っている場合には、生計を一にしているとみなされ医療費控除の対象になります。
医療費控除の対象期間
医療費控除の対象期間は、適用を受ける年の1月1日から12月31日までです。
たとえば、2024年に前年の医療費控除を申請する場合は「2023年1月1日から12月31日」に支払った医療費を合計します。
未払いの医療費については、実際に支払った年の医療費控除の対象になります。
そのため、2023年12月に受けた治療の代金を2024年1月に支払った場合、控除対象としてカウントできるのは「2024年」です。
状況に応じてセルフメディケーション税制の活用を検討しよう
セルフメディケーション税制とは、ドラッグストアなどで市販薬を購入した費用を所得控除の対象とする制度です。
医療費控除の対象にならない場合でも、セルフメディケーション税制による控除を受けられる可能性があります。
セルフメディケーション税制の概要は、以下のとおりです。
セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)は、医療費控除の特例として、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。
少しわかりづらいですが、
- ドラッグストアなどで対象商品を年間1万2000円/世帯 以上購入
- 予防接種や健康診断受診を行い領収書や通知表を保存している
- 医療費控除を受けていない
ということがざっくりとした適用要件です。
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例として扱われるため、同時に申請することはできません。
病院に通うケースが多い人は医療費控除を選択するなど、状況に応じて自身にあった制度を活用することが重要です。
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%以上の医療費を支払った場合
【具体例】医療費控除の対象になる・ならない費用
医療費控除の対象になるのは、治療目的の診察や通院にかかる費用です。
ここからは具体的な例を挙げながら、医療費控除の対象になる費用について解説します。
医療費控除の対象になる費用
医療費控除の対象になる具体的な費用の例は、以下のとおりです。
- 医師または歯科医師による診療費・治療費
- 治療・療養に必要な医薬品の購入費
- 医療器具の購入費
- 病院などへの入院費
- 通院にかかる交通費
- 歯の治療費(保険適用外を含む)
- 治療を目的とするリハビリ費・マッサージ費
- 介護保険の対象となる介護費用
病状などに応じて、一般的に支払われる水準を著しく超えない範囲が、医療費控除の対象となります。
医療費控除の対象にならない費用
医療費控除の対象にならないのは、以下のように治療を目的としない施術や購入にかかる費用です。
- コンタクトレンズの購入代金
- 疲労回復を目的としたマッサージ代
- 美容整形
- 体に異常のない状態の健康診断の費用
- 自己都合による入院時の差額ベッド代
ただし、医師が治療目的と認めたものは医療費控除が認められるケースがあります。
【ケース別】医療費控除の注意点
目的によって取り扱いが変わる費用の代表例は、以下の3つです。
- 出産費用
- 入院費用
- 歯の治療費
それぞれ順番に見ていきましょう。
出産費用
妊娠・出産に関わる費用のうち、以下の費用は医療費控除の対象になります。
- 入院中の食事代
- 妊婦と診断されたあとの定期検診や検査、通院にかかる費用
- 公共交通機関による移動が困難な場合のタクシー代
一方で、以下のケースは医療費控除の対象と認められていません。
- 入院中の出前や外食にかかる費用
- 里帰り出産するための交通費
- 入院用の生活用品の購入費
また、出産に伴って支給される「出産育児一時金」や「家族出産育児一時金」は、医療費の合計から差し引いて控除額を計算する必要があります。
控除額の詳しい計算方法は後述します。
入院費用
入院中に病院から支給される食事は入院代に含まれるとみなされ、医療費控除の対象になります。
しかし、出前や外食にかかる費用は控除の対象になりません。
また、診療の対価でない医師や看護師へのお礼は、控除の対象外として扱われます。
歯の治療費
自由診療や高価な材料を使用した歯の治療は、一般的に支払われる水準を著しく超えると認められる場合、医療費控除の対象にはなりません。
歯列矯正は、治療を受ける目的や年齢などからみて判断されます。
たとえば、子どもの成長を阻害しないよう不正咬合の歯列矯正をした場合など、必要と認められる治療は控除の対象となります。
一方、容ぼうを美化する目的のみでの矯正は、控除の対象外です。
歯の治療費をローンやクレジットで支払う場合は、契約が成立した年の医療費控除の対象となります。
医療費控除を申請するための4つの手順
医療費控除の申告手順は、以下の4ステップです。
- 医療費控除の対象になるか確認する
- 医療費控除額を計算する
- 確定申告書と医療費控除の明細書を作成する
- 税務署に提出する
それぞれ順番に解説します。
医療費控除の対象になるか確認する
適用を受ける年の1月1日から12月31日までに支払った医療費のうち、医療費控除の対象となる費用の合計が10万円を超えているか確認します。
その年の総所得金額が200万円未満の場合は、支払った医療費の合計が総所得金額などの5%を超えていれば対象です。
なお、マイナンバーカードを持っている人は、マイナポータルと連携することで支払った医療費についての情報を一括取得し、確定申告書への自動入力が可能です。
マイナポータルで事前に代理人申請しておくと、生計を一にする家族の医療費の情報を取得できます。
医療費控除額を計算する
医療費控除の対象になるとわかったら、次に控除額を計算します。
医療費の控除額は、対象となる1年間に支払った医療費から保険金などで補填された金額と10万円を差し引いて計算します。
確定申告書と医療費控除の明細書を作成する
医療費控除の申請に必要な「確定申告書」と「医療費控除の明細書」を税務署の窓口や国税庁のホームページから入手し、作成します。
書類の書き方についての詳しい手順は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で確認できます。
参照:確定申告書等作成コーナー
税務署に提出する
作成した「確定申告書」と「医療費控除の明細書」をお住まいの地域を管轄する税務署に提出します。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日の申告期間内で手続きが必要です。
これで、医療費控除の申請手続きは完了です。
まとめ 医療費控除とは?
医療費控除は、一定額以上の医療費を支払った人が所得税の還付を受けられる制度です。
対象となる費用の例には、治療を目的とする診察代や処方箋をもらっている薬の購入費が挙げられます。
医療費控除を簡単に済ませるためには、マイナンバーカードを利用して医療費に関する情報を自動で取得するのがおすすめです。
なお、医療費の負担が大きいと感じている方は、ほかにも使えるお得な制度がないかプロに相談するのが良いでしょう。
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