【FPが解説】高額療養費制度とは?仕組みや申請方法をわかりやすく紹介
この記事では高額療養費制度について、仕組みから申請方法に至るまでプロがわかりやすく解説していきます。
「高額療養費制度の仕組みを知りたい」
「自己負担額を計算したい」
という方は、ぜひ参考にしてください。
記事監修者
ファイナンシャルプランナー
綾目脩志
高額療養費制度とは?仕組みを解説
高額療養費制度とは、医療費がひと月で一定額を超えた場合に、国や自治体から超過分の医療費が支給される制度です。
具体的には、窓口で保険証を提示すれば、負担する医療費は総額の1〜3割になり、残りの金額は国や自治体から支給されます。
実際にどれくらいの金額が支給されるのか、以下の条件で試算してみましょう。
- 年齢:70歳
- 年収:約400万円
- 医療費:100万円
この場合は、実際の自己負担額は87,430円のみとなり、残りの医療費は国や自治体から支給されます。
このように高額療養費制度を利用することで、患者や家族の医療費負担を減らし、難病や重病の治療を受けやすくできます。
ただし、差額ベッド代や先進医療にかかる費用、入院中の食事代は高額療養費制度の対象にならないため注意してください。
高額療養費制度の自己負担額の計算方法
高額療養費制度の自己負担額は年齢や年収によって異なります。
以下に、69歳以下と70歳以上の場合の自己負担額の計算方法をまとめたため、参考にしてください。
69歳以下の方の高額療養費制度の自己負担限度額
69歳以下の方の自己負担限度額の計算方法は、以下の通りです。
年収 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
例えばですが、
30歳で年収約770〜約1,160万円のケース
医療費が100万円かかる場合、
自己負担上限額は171,820円(167,400円+(100万円-558,000)×1%)のみとなり、
残りの医療費は国や自治体から支給されます。
70歳以上の方の自己負担限度額
70歳以上の方の自己負担限度額の計算方法は、以下の通りです。
年収 | 外来(個人ごと) | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | |
年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | |
年収156万~約370万円 | 18,000円 | 57,600円 |
住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 |
例えばですが
70歳以上で年収約370〜約770万円のケース
医療費が100万円かかる場合、
自己負担上限額は87,430円(80,100円+(100万円-267,000円)×1%)のみとなり、
残りの医療費は国や自治体から支給されます。
このように高額療養費制度を利用することで、患者や家族の医療費負担を減らし、難病や重病の治療を受けやすくできます。
自己負担額をさらに軽減する方法
高額療養費制度を利用すれば医療費負担を減らし、難病や重病の治療を受けやすくできます。
しかし、自己負担額をさらに軽減する方法が3つ存在します。
- 限度額適用認定証を交付してもらう
- 自己負担額を世帯で合算する
- 多数該当で自己負担額が引き下げる
それぞれ解説します。
限度額適用認定証を交付してもらう
通常、高額療養費制度では自己負担上限額を超えた分の払戻しを受けるため、窓口では一時的に高額な医療費を支払わなければなりません。
しかし、その月の医療費が自己負担上限額を超えるとあらかじめ分かっている場合、「限度額適用認定証」を提示すれば、窓口で支払う金額を自己負担限度額まで抑えることができます。
例えば30歳で年収約770〜約1,160万円の方は、医療費が100万円かかる場合、窓口で一時的に30万円を支払った後に、約13万円が国や自治体から支給されます。
しかし限度額適用認定証を提示すれば、窓口で支払う額を自己負担上限額の約17万円に抑えることが可能です。
このように限度額適用認定証を交付してもらえば、一時的に高額な医療費を支払う必要がなくなります。
興味がある方は、加入している公的医療保険より申請書を入手できるため、一度確認してみましょう。
参考:協会けんぽ|医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定)
自己負担額を世帯で合算する
1人分の医療費では自己負担上限額を超えない場合でも、同じ世帯の方の医療費を合算して自己負担上限額を超えれば、高額療養費制度の利用が可能です。
例えば年収約370〜約770万円の夫婦の場合、自己負担額が80,100円を超えると高額療養費制度の対象になります。
そして、ひと月の医療費の自己負担額が夫は7万円で妻が3万円の場合、夫のみでは高額療養費の支給対象外ですが、妻と合算すると10万円になり支給対象になります。
ただし、自己負担額を世帯で合算するためには、同じ公的医療保険に加入していなければなりません。
例えば夫と子供が健康保険に、妻が国民健康保険に加入している場合は、世帯合算はできません。
そのため世帯合算に興味がある方は、一度家族が加入している公的医療保険を確認してみましょう。
多数該当で自己負担額を引き下げる
過去12か月以内に高額療養費制度を利用して、3回以上自己負担上限額に達している場合は、4回目から「多数該当」となり、自己負担上限額を引き下げることが可能です。
例えば10月を当月として、同年の1月、4月、7月に高額療養費制度を利用している場合、4回目である10月は自己負担額が引き下げられます。
具体的には、69歳以下の年収約370万〜約770万円の方の場合は、自己負担上限額が「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」から44,400円に下がります。
ただし70歳以上で「住民税非課税」の区分の方については、多数回該当の適用はないため、注意してください。
高額療養費制度があればがん保険はいらないの?
読者の方の中には
「がんになったらお金がかかって大変そう…」
と考える方もいると思いますが、高額療養費制度があれば基本的にがん保険は不要と言われることが多いです。
なぜなら、がん治療の自己負担額は、大半の方がイメージしているよりも少なくて済むからです。
具体的には、69歳以下で年収約370万〜約770万円の方であれば、ひと月の医療費が100万円だったとしても、自己負担額は87,430円に抑えることができます。
ひと月に約8万円であれば、がん保険に支払う予定の保険料を貯金しておけば、支払うことは十分可能でしょう。
しかし、一概に不要と決めつけてしまうことは極めて危険な判断かもしれません。
例えばですが、高額療養費制度では、差額ベッド代や先進医療にかかる費用はカバーできません。
さらに、実際にがんに罹患された方の話を聞くと、
治療に際して仕事を休むことが多くなり収入減少につながった
見舞いへのお返しや家族の交通費など雑費が多くかかった
などという声を多く聞きます。
社会保障としての高額療養費制度があるため、治療費が払えずに困ってしまうことはあまり無いかもしれませんが、実際にがんになってしまったときのことをイメージして備えておくことが重要です。
高額療養費制度の申請方法を解説
高額療養費制度の申請方法は、加入している公的医療保険によって異なります。
まず健康保険に加入している方は、医療費が自己負担限度額を超えた際に、保険証に記載されている協会けんぽの支部に「高額療養費支給申請書」を提出してください。
そして国民健康保険に加入している方は、医療費が自己負担限度額を超えると、自治体から世帯主宛てに申請書が郵送されてくるため、必要書類を添付して郵送してください。
ただし、高額療養費制度の申請には期限が設けられており、診療を受けた月の翌月1日から2年以内に申請する必要があります。
高額療養費制度に興味がある方は、まずは加入している公的医療保険を確認してみましょう。
まとめ 高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、医療費がひと月で一定額を超えた場合に、国や自治体から超過分の医療費が支給される制度です。
例えば69歳以下で年収約370万〜約770万円の方であれば、ひと月の医療費が100万円だったとしても、自己負担額は87,430円に抑えることができます。
このように高額療養費制度を利用することで、患者や家族の医療費負担を減らし、難病や重病の治療を受けやすくできます。
ただし年齢や年収によって自己負担額の上限が設定されているため、注意してください。
また申請の流れや必要な書類は、加入している保険によって異なるため、まずは自分がどの保険に加入しているかを確認するところから始めましょう。
しかし、自分1人で保険内容を確認したり、申請の流れを調べたりするのは難しい方も多いでしょう。
そのような際には、一度専門家と面談してみてはいかがでしょうか。
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まずは一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。