【FP監修】退職金はいくら?大企業・中小企業で勤続年数別に紹介【中小企業は少ない?】

リアル家計簿をのぞく2023.02.25 公開 | 2024/08/13 更新

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この記事では、大企業と中小企業の退職金額を、勤続年数別や業種別、男女別で紹介します。
「中小企業の退職金は少ないって本当?」
「勤続年数別の退職金額が知りたい」
という方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも退職金とは?仕組みを解説

退職金とは、働いていた企業から退職時に支払われる賃金のことです。

退職金の支給方法は以下の3つに大別されます。

  1. 退職一時金制度
  2. 企業年金制度
  3. 前払い制度

「退職一時金制度」は退職時に一括で、「企業年金制度」は退職後から定期的に分割で、退職金が支給される方法です。

ただし「前払い制度」では、毎月の給与やボーナスに上乗せして退職金が支給されるため、知らないうちに使ってしまわないようにしましょう。

また中小企業の中には、そもそも退職金制度を設けていない企業もあるため注意してください。

東京都産業労働局によると、28.3%の中小企業は退職金制度を設けていないそうです。

そのため自分の退職金について気になる方は、勤務先の退職金制度を確認してみると良いでしょう。

参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和5年版)

大企業の退職金はいくら?

大企業の定年時の平均退職金額を学歴別に見ると、以下の通りです。

学歴 平均退職金額
大学卒 2511万円
短大・高専卒 1882万円
高卒 2379万円

このように定年時の退職金額では、大学卒と高卒にはほとんど差がないことがわかります。

ただし退職金額は、勤続年数や業種によって大きく異なるため、ここからは勤続年数別と業種別で平均退職金額を紹介します。

参考:中央労働委員会|令和元年度賃金事情等総合調査 

勤続年数別の退職金

大企業で勤務している大学卒の平均退職金額を勤続年数別に見ると、以下の通りです。

勤続年数(年齢) 会社都合退職 自己都合退職
3年(25歳) 69万円 32万円
5年(27歳) 118万円 59万円
10年(32歳) 310万円 180万円
15年(37歳) 578万円 387万円
20年(42歳) 953万円 727万円
25年(47歳) 1394万円 1143万円
30年(52歳) 1915万円 1706万円
35年(57歳) 2365万円 2163万円
38年(60歳) 2528万円 2269万円

上記の表から分かるように、転職などの自己都合退職の方が会社都合退職よりも退職金額は少なくなりますが、定年が近づくと差は縮小します。

また若手社員が転職で退職する場合も、5年間働いていれば59万円とまとまった金額が受け取れるため、退職後に転職活動をする場合でも、2〜3ヶ月は退職金を頼りに生活できるでしょう。

参考:厚生労働省|賃金事情等総合調査(2021年度)

業種別の退職金

大企業で勤務している大学卒の平均退職金額を業種別で見ると、以下の通りです。

業種 退職金の平均額
鉱業 2902万円
繊維 3942万円
化学 2174万円
石油 4072万円
機械 1253万円
建設 2583万円
銀行・保険 2308万円
私鉄・バス 2419万円
海運・倉庫 1752万円
百貨店・スーパー 2463万円
新聞・放送 2643万円
ホテル・旅行 2202万円
全産業の合計 2511万円

上記の表から分かるように、最も退職金額が高いのは「石油業」の4072万円、最も低いのは「機械業」の1253万円で、約2800万円も異なります。

このように退職金額は業種によって大きく異なるため、自分の働いている業種に合わせて、確定拠出年金やNISAなど、退職金以外の老後資金形成手段を考えましょう。

参考:中央労働委員会|令和元年度賃金事情等総合調査

中小企業の退職金はいくら?

中小企業の定年時の平均退職金額を学歴別に見ると、以下の通りです。

学歴 平均退職金額
大学卒 1092万円
短大・高専卒 983万円
高卒 994万円

上記の表から分かるように、どの学歴の平均退職金額も大企業の半分以下しかなく、

「こんなに少ないとは思っていなかった…」

という方が多いのではないでしょうか。

なぜ中小企業の退職金は少ないかというと、中小企業は大企業よりも経営基盤が整っておらず、退職金を確実に支払える経済力がないからです。

そのため中小企業で働いている方は、老後資金を形成するには退職金だけでなく、確定拠出年金やNISAなども利用する必要があるでしょう。

ここからは大企業と同様に、勤続年数別と業種別で平均退職金額を紹介します。

参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

勤続年数別の退職金

中小企業で勤務している大学卒の平均退職金額を勤続年数別に見ると、以下の通りです。

勤続年数(年齢) 会社都合退職 自己都合退職
3年(25歳) 34万円 23万円
5年(27歳) 64万円 47万円
10年(32歳) 150万円 112万円
15年(37歳) 266万円 213万円
20年(42歳) 415万円 343万円
25年(47歳) 578万円 491万円
30年(52歳) 754万円 654万円
35年(57歳) 876万円 776万円
38年(60歳) 1092万円

このように中小企業では、定年退職時だけでなく、各年齢別の退職金額も大企業の半分以下であることが分かります。

若手社員が転職で退職する際は、5年働いていれば47万円は受け取れますが、退職後に転職活動をする場合はあらかじめ貯金をしておく必要があるでしょう。

参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

業種別の退職金

中小企業で勤務している大学卒の平均退職金額を業種別で見ると、以下の通りです。

また大企業とは別の統計資料を使用しており、業種の区分が異なるため注意してください。

業種 退職金の平均額
建設業 1220万円
製造業 1068万円
情報通信業 1193万円
運輸業、郵便業 1332万円
卸売業、小売業 1132万円
金融業、保険業 1442万円
不動産業、物品賃貸業 1013万円
学術研究、専門 ・ 技術サービス業 965万円
生活関連サービス業、娯楽業 847万円
教育、学習支援(学校教育を除く) 1245万円
医療、福祉 342万円
サービス業 904万円
全産業の合計 1092万円

上記の表から分かるように、中小企業では退職金額が1000万円を下回ることも珍しくないため、退職金以外にも老後資産形成を進める必要があるでしょう。

参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

女性の退職金は男性よりも少ない?

一般的に女性は男性よりも、退職金額が少ない傾向にあります

なぜなら女性は妊娠・出産などのために、一時的に仕事を辞めることがあり、勤続年数が男性よりも短くなりがちだからです。

退職金は一般的に、勤続年数と役職に応じて支払われることが多く、勤続年数が長く出世しやすい男性の方が退職金額が多くなります。

実際に私の女性の知人は、大企業に10年以上勤めていましたが、退職金はそれほど多くなかったと言います。

その理由としては、育休の取得によって勤続年数が短くなったこと、また復帰後は非正規雇用になったため、退職金の算出対象になる給与が低かったことが挙げられるそうです。

ただし、近年は女性の社会進出が進んでいることから、男女の退職金格差は縮まりつつあります。

企業によっては男女の退職金について同一基準を設けるようになっているため、興味がある方は勤務先の退職金制度を確認してください。

老後資産を自分で形成する方法を3つ紹介

退職金以外で老後資産を形成する方法は、以下の3つです。

  • 確定拠出年金
  • 新NISA
  • 保険を見直す

特に中小企業で勤務している方は、ぜひ参考にしてください。

確定拠出年金

確定拠出年金とは、国民年金や厚生年金とは別に、自分で老後資産を作る私的年金制度です。

企業型を「企業型DC」、個人型を「iDeCo(イデコ)」と呼びます。

そして確定拠出年金のメリットは、以下の2つです。

  1. 掛金が所得から控除される
  2. 60歳まで資金を引き出せない

まず確定拠出年金で支払う毎月の掛金は、全額所得控除されるため、所得税と住民税を節税できます。

また、人は目の前にお金があるとどうしても使いたくなってしまうため、60歳まで資金を引き出せなくすることで、老後資産を確実に形成できます。

実際にどれくらいの老後資金を形成できるか、以下の条件で試算してみましょう。

  • 毎月の掛金:毎月23,000円
  • 運用期間:35年間
  • 運用利率:3%
所得税・住民税の節税額 2,898,000円
積立元金 9,660,000円
運用益 7,395,964円
合計金額(積立元金+運用益) 17,055,964円

上記の場合は約290万円も節税しながら、約1700万円も年金として受け取れます。

このように確定拠出年金は資産形成に非常に有効なため、ぜひ有効活用してください。

iDeCo(イデコ)に興味がある方は、こちらの記事も参考にしてください。

新NISA

NISAとは、資産形成を行いたい人をサポートするための、投資非課税制度です。

通常の証券口座では、株式・投資信託で得た売却益等に20.315%の所得税がかかりますが、NISA口座の場合は所得税はかかりません。

また2024年1月から、NISA制度が以下のように大幅拡充されることが決定しました。

現行のNISA 新NISA(2024年1月~)
名称 一般NISA つみたてNISA 成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資額 120万円 40万円 240万円 120万円
保有期間 5年 20年 無期限
生涯投資上限額 600万円 800万円 1200万円 600万円
利用可能期間 2023年まで 2042年まで 恒久化

投資は長期で行うほうが大きな利益を期待できるため、保有期間の無期限化は特に好ましい変更点です。

実際にどれくらいの老後資金を形成できるか、以下の条件で試算してみましょう。

  • 毎月の掛金:毎月42,000円
  • 運用期間:35年間
  • 運用利率:3%
積立元金 17,640,000円
運用益 13,505,674円
合計金額(積立元金+運用益) 31,145,674円

上記の場合は、積立元金と運用益を合わせて約3115万円も老後資金として受け取ることができます。

このように新NISAは資産形成に非常に有効なため、2024年からぜひ始めてみましょう。

新NISAに興味がある方は、こちらの記事も参考にしてください。

保険を見直す

保険の見直しは、老後資産の形成にとって有効な手段の1つです。

なぜかというと

  1. 不要な保険を見直すことで保険料の節約が出来る
  2. 資産性の保険を活用することで節税しながら効率的な資産形成が出来る

からです。

実はご自身の目的やニーズにあわせて適切な保険をプランニング出来ているという方はあまり多くありません。

保険には多種多様な種類があり、掛け捨てのものから積立のものまでご自身で調べて理解をするということは非常に難しいといわれています。

そのため保険の見直しは、あなた自身のライフプランに合わせて行うことが大切なため、プロのアドバイザーに相談することをおすすめします。

まとめ 退職金っていくらもらえるの?

大卒サラリーマンの平均退職金額は、大企業では2511万円、中小企業では1092万円と、大企業の方が2倍以上も多いです。

なぜなら、大企業は中小企業よりも経営基盤が強固な場合が多く、退職金を確実に支払える経済力があるからです。

ただし、退職金は勤続年数に応じて支払われることが多いため、人によっては大企業でも数百万円しかもらえないこともあります。

また女性の場合、妊娠や出産で一時的に仕事を辞めることで、勤続年数が短くなりがちのため、退職金額が男性よりも低いことが多いです。

そのため老後資金を形成するには、退職金だけに頼るのではなく、確定拠出年金やNISAなども考える必要があるでしょう。

しかし、自分1人だけで老後資金形成を考えるのは難しいという人が多いでしょう。

そのような際には、一度専門家と面談してみてはいかがでしょうか。

「まずは気軽にお金のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、MoneypediaのオンラインFP相談サービスです。

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まずは一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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